雑談208
高齢者の“そんなに食べていないのに痩せない”現象には、単なる記憶のズレだけでなく、長年の生活習慣、加齢による体の変化、特有の心理が複雑に絡み合っています。
医学的・栄養学的な研究では、本人が食べていないと報告する食事量と、実際の摂取量に大きなズレがある現象は過小申告と言われています。
実際に医学誌の論文において、食事制限をしているのに痩せないと主張する肥満者を対象に、体内でのカロリー消費を精密に測る二重標識水法を用いた厳密な調査が行われました。
その結果、被験者たちは実際の食事量を平均して約47%も少なく自己申告しており、逆に自分の運動量は約51%も多く見積もっていたことが判明しています。
この認識のズレは一般の人に限ったことではなく、食事のプロである管理栄養士を対象にした実験でも、自分の食事量を平均して1日あたり約223kcal少なく記録してしまう傾向が確認されているほど、人間の脳にとって正確な把握は困難なものです。
この医学的な知見を踏まえ、家事を担う高齢者のライフスタイルを分析すると、まず大きな要因として、在宅時間が長く日々の食事作りを任されているからこそ、日常生活の中にカウントされないカロリーが自然と溶け込んでいることが挙げられます。
例えば、家族の残り物や少しだけ余ったおかずを捨てるのはもったいないと片付けの延長で口に運ぶ習慣や、毎日の調理中に無意識に何度も繰り返す味見がこれに該当し、これらだけで1日100〜200kcalに達することがあります。
また、自宅で一息つく際や近所付き合いの中で、おせんべいや飴玉、甘い飲み物を口にする機会も増えますが、これらはどれも一口サイズで小粒なため、本人の頭の中では食事としてカウントされず、食べた記憶から簡単に抜け落ちてしまいます。
さらに、心理学や行動科学の研究においても、スマホやテレビを見ながらのながら食べや、カフェラテ・ジュース・お酒などの液体のカロリーは、脳が水分補給と捉えがちで罪悪感や記憶に残りくいことが証明されています。
こうした無意識のつまみ食いに対して、加齢に伴う消費カロリーの大幅な低下がさらに拍車をかけます。
年齢を重ねると筋肉量が自然に減少するサルコペニアなどの現象や、ライフステージの変化によって外出や家事など一日の活動量の絶対量そのものも減っていきます。
そのため、本人が若い頃より食べる量を減らしていると思っていても、現在の体格を維持するために必要なエネルギー枠そのものが、それ以上に少なくなってしまっているのが現実です。
ここにちゃんとした食事への強いこだわりという心理的要因、および確証バイアスと呼ばれる自己評価の歪みが加わります。
この世代は、お茶碗に盛ったご飯とおかずを揃えて食べることを食事と強く定義している傾向が強く、お昼は白米を抜いてパンとコーヒーだけにしたという免罪符があると、自分は食べていないと思い込みがちです。
しかし実際には、菓子パン(高カロリー高脂質)、あるいはサラダのドレッシングや炒め物の油といった調味料によって、結果的に白米以上のカロリーを摂取しているケースが多々あります。
この年代の食べていないという言葉は決して嘘ではなく、本人の中では真実です。
しかし実際には、きちんとした食事の量は確かに減らしているものの、カウント外のカロリーが、落ちてしまった消費カロリーを簡単に上回ってしまっている状態にあると言えます。
なんとなく口にしている甘い飲み物、スナック菓子、洋菓子、つまみ食い。
今現在の体重を維持するのに必要なカロリーを、例えば毎日100Kcalオーバーしたとすると、30日で3,000Kcal、60日で6,000Kcal、300日で30,000Kcalが余っていきます。
脂肪1kgは、7,200Kcalあるので、72日で脂肪が1kg増、300日で脂肪は4kgほど増え、365日で5kg増となりますね。
現実は複雑に絡み合うので、計算通りにはいきません。
おそらく実際は、糖分摂取も増えるので、抱え込む水分も多いでしょうから、もっと体重は増えるかもしれません。
運動で痩せようとするのは、実は難しいことです。
運動で消費できるカロリーって、そんなに多くないのです。
なぜ運動をするのかというと、筋肉を維持するには、運動が不可欠だからです。
体重を減らす、体脂肪を減らすには、食事内容の見直しが必須です。
気になる方は、一日だけでもいいので普段の食事を記録してみてください。
自分が何をどのくらい口にしているのか、正確に調べてみると、見えてくるものがありますよ。
