雑談196

60代以降を迎えると、身体の中で暑さやのどの渇きを感じるセンサーが少しずつ鈍くなってきます。
特に仕事や趣味、スポーツなどで毎日を元気に活動している方ほど、自分の体力を過信してしまいがちです。
本人はまだ若いし大丈夫、これくらいの暑さは平気だと思っていても、身体の中には気づかないうちに熱がどんどんこもっていきます。

実は、人間の身体の中で最も水分を多く蓄えている貯水タンクの役割を果たしているのは筋肉です。
筋肉の約8割は水分でできており、汗をかいたときはこの筋肉の水分が身体中をめぐって身を守ってくれます。
しかし、年齢を重ねて筋肉の量が減ってくると、身体の中に貯められる水分の量そのものが減ってしまうため、若い頃よりも一気に熱中症になりやすくなります。
熱中症の本当に怖いところは、暑い場所にいるその瞬間だけでなく、数時間から半日ほど経った夜中に突然症状が出ることです。
日中に外で活動しているときは、緊張や楽しさのせいで身体の異変や危険なサインに気づくことができません。
しかし、その間にも身体の中の筋肉タンクからは水分がジワジワと失われ、熱のダメージが確実に蓄積されていっています。
外での活動を終えて家に帰ってホッとしたあとや、夜寝ている間に、その溜まったダメージが一気に頭痛や吐き気、激しいだるさとなって襲いかかってきます。

さらに日本の夏は夜になっても気温が下がりにくく、昼間に暖められた壁や天井から熱が部屋の中に放出され続けます。
昼間は元気に過ごできたから大丈夫と油断してエアコンを消してしまうと、寝ている間にさらに熱中症の症状が進んでしまいます。
睡眠中は気分の悪さに自分で気づくことができないため、目が覚めたときにはすでに自力で動けないほど重症化しているケースも少なくありません。
もし熱中症で40度を超えるような高熱が続いてしまうと、命が助かったとしても脳に重大な後遺症が残ることがあります。
生卵に熱を加えるとゆで卵になり、それが二度と元の生卵には戻らないのと同じように、脳の細胞も強い熱で一度固まって壊れてしまうと、元の元気な状態には戻せません。
その結果、体温が下がったあとも、記憶力の低下や、手足のしびれ、意思の疎通が難しくなるといった恐ろしい症状が一生残ってしまうのです。

このように、熱中症は目の前の暑さだけでなく、時間差で夜間に命や脳を脅かす事態を引き起こすからこそ恐ろしい病気です。
自分はまだ大丈夫という過信を捨てて、昼間の熱を夜まで持ち越さないよう、室内の温度管理や夜間の環境にも十分に警戒してください。