雑談77
10年ほど前に「ファストファッション クローゼットの中の憂鬱」を読みました。
アメリカのアパレル産業についてのルポルタージュです。
ファストファッションは非人道的に栽培された綿花を使い非人道的な工場で作られているのでそれってどうなのか、まともな環境で作られた服を選び、大事にしようといった内容だった気がします。
酷い火災で多くの犠牲者を出したことや酷い労働環境などが明るみになったことでファストファッションの企業は批判され続け、その改善を約束しました。
サスティナブルやリサイクル、リユース、素材の生産地がわかるタグなどが付けられたり、少しずつ変化しているように見えつつ、それでも相変わらずたくさんの服が生み出されてはゴミとなって、その処分はアフリカに持って行って埋め立てたり不法投棄するというスタイルで、ずっと問題になっています。
10年前のアメリカでは老舗のデパートが軒並み閉店しアパレルは二極化していました。
ファストファッションか高級ブランドか。
90年代に工場は閉鎖され、多くは中国に工場を移していたので、メイドインアメリカ製品はほんの僅かになっていました。
元々アメリカ製品って繊細さはなくいい加減なところも多いけれど、素材を含めて強く無骨でそれがいいみたいな部分がありました。
工場を移したことで、縫製はむしろ揃って綺麗になったのかも知れませんが、素材の質をシレッと下げていたりして、コアなファンは離れ、それでもマーケティング戦略で売上だけはあるといった感じになっていたような気がします。
革製品のコーチもそうだったような。
昔々のコーチはグローブに使うような分厚い革でバッグを作っていたのでそれはそれは重い上にデザインも飾り気のないものでしたが、工場をアジアに移した頃にデザインを一新し路線を変えて今のような見る影もない姿になりました。
女性がブランドバッグに昔ほど価値を見出さなくなって久しいですが、古着好き男性の中にはオールドコーチと呼んで昔のコーチを好んで買う人たちがいるので、なんだか皮肉だものだな〜と思ったりします。
そんなこんなでアメリカのアパレルブランドの多くは工場を中国に作り、中国の人件費が上がってきたらより安いバングラデシュやカンボジア、ベトナムなどに移しています。
ヨーロッパの高級ブランド(多くはフランス)は、逆に自国の潰れそうな皮革製品の工場を買い取ってスタッフごと抱え込んだりします。
その工場とスタッフがなくなったら技術が失われてしまうのをわかっているからです。
そういう経費も込み込みのお値段で、産業を支えている側面があるんですね。
高級ブランドの上顧客とは年間億単位の支払いがある方々を指します。
そういった財力のある方々が支えているんですね〜
さて、どちらにせよ、ほとんどのアメリカ人は自国で作られている服を着ていないのです。
先週トランプ関税が発表された時にパッと見て思ったのが、上に挙げたアパレル工場があるバングラデシュやカンボジア、ベトナムなど国の関税がずいぶん高いな…でした。
そもそも人件費が安くて工場を作ったような国にこの関税?と思っていたら早速ベトナムのラム書記長がトランプ大統領と交渉し始めたので、このどんぶり勘定みたいな数値は敢えてで、交渉するため?それなら脊髄反射で反応するのもダメなんだろうな〜でも、4月9日に始まるっていうし時間なさすぎ!と混乱してしまいます。
派手にスクラップアンドビルドしたいのかもしれないですが、この方法でグレートなアメリカを取り戻すことができるんですかね?